映画「パーマネント野ばら」

調子が悪いときは映画を見て気を紛らわす。
でも、ハズレに当たることもあり、そんな時はつらさが倍増する。最近では「ウォールストリート」が強引なハッピーエンドでひどくへこんだ。

一方で、DVDでは当たりつづき。自分で選んでいるから当然っちゃあ当然。

吉田監督の「パーマネント野ばら」もそのうちの一本。薦めてくれた母親に感謝。

なおこは離婚後に娘を連れて地元に帰り、実家の散髪店「野ばら」を手伝いながら暮らしている。地元はさえない人生を送る住民で溢れている地方の漁村。久しぶりに会った幼なじみもしょうもない男に振り回されて、つらい日々を過ごしている。
なおこはそんな住民や幼なじみの世話を焼いていたが、実は彼らに秘密を持っていた。それは教師のカシマさんと付き合っていること。二人は人知れず愛を育んでいる、なおこはそう信じていた。
だが、物語の終盤で驚愕の真実が明らかになる。カシマさんはすでに死んでいた。なおこは学生時代にカシマさんと禁断の恋をしたが、事故で彼を失ってしまい、そのショックから彼の死を受け入れずに生きてきたのである。

愛する人を失わないために嘘をつき続けた、なおこ。どれだけ嘘で塗り固めようとしても現実は残酷になおこを苦しめる。カシマさんが近くにいるはずなのに、こんなにも寂しいのはなぜなのかと自問し、またデートの途中で突然消えるカシマさんに泣きながら抗議して、少しずつ真実を自覚していく。なおこは幼なじみに問う。「わたし、狂ってる?」と。とんと愛に疎い僕はこの痛いほど一途な思いにたじろぐ。愛ってすげえな。

僕が純愛よりも胸を打たれたのは、なおこに面倒ばかりかけていたかに見えた周りのひとの優しさである。みんな、なおこが病んでいることを知りながら、実は見守っていた。なおこにそれを悟らせぬように自然に振舞っていたのである。こういう愛情の方が僕にはしっくりくるんだよな。

そして、最後に全てが明かされ、それまでの物語の解釈が反転するという構成をとる脚本が何よりすごい。吉田監督、すげーーー。もっと映画を撮って下さい!