映画「川の底からこんにちは」

寒波に負けずに、石井裕也川の底からこんにちは」を見に行ってきた。

この映画はとうの昔に上映が終わったと思っていたが、場末の映画館で上映していることを発見。さっそく足を運んだというわけである。


「しょうがない」が口癖の20代の女性が、しょうがないではすまない状況に陥り、そこから開き直って生きていくという成長の物語を、全編に洒脱なユーモアを交えながら描くポップな作品であった。

クールなようで狂気を内に秘めた女の子を、満島ひかりが好演していた。彼女は、最初は嫌なことがあってもあっさり諦めているのだが、そのうち彼氏が子持ちバツイチと分かるわ、そいつが会社辞めるわ、父親が死にそうで潰れかけの会社を任されるわで、どんどん追い込まれていく。しょうがないと言えるうちは、本当にしょうがないわけではないことが分かるのである。しまいには、実家まで付いて来た男が浮気をして逃げてしまうという踏んだり蹴ったり。
それでも、落ちるところまで落ちたらもう上がるしかない。彼女はそう悟り、「自分は中の下の女ですから!がんばるしかないんですから!」と異様な部分で開き直りを見せながら、周りを巻き込んで会社を建て直す。

「がんばる」という言葉は無責任で嘘くさいので嫌いだったが、これほどマイナスの思いを引きずりながら叫ばれると胸に響く。やるしかないのに、どうしてやらないのと問い詰められているような気持ちになった。
もう少し広い視点で見ると、この物語は下流とか負け組というラベルに甘んじて何も行動を起こさない、変に諦めのよい若者に対する批判にもなっている。

ポップなようで、メッセージはわりとシリアスなのである。

石井さんの次回作を楽しみにしている。
久しぶりに、映画で大笑いしたもんな。