映画『ノルウェイの森』

昨晩、ルミナリエでごった返す三宮にわざわざ行き、映画『ノルウェイの森』を見た。
ぎゅうぎゅうに混んでいるかと思っていたが、レイトショーということもあり、余裕を持って鑑賞できた。

大学時代、することもやりたいこともなく、そしてバイトをするわけでもなかった僕は恐ろしく暇だった。そして、暇な人間はろくなことを考えない。当時、生きるとは?死ぬとは?といった青臭いことで悩んでいた。
当人にとっては相当苦しい時期だった。そんな時にひとつの視点を提示してくれたのがノルウェイの森だった。

死は生と対極のものではなく、生の一部であるといった哲学にひどく惹かれたのを覚えている。

その後、「ノルウェイの森」より「タイランド」をより好むようになったが、初めて読んだ時の新鮮な気持ちは忘れがたいものがある。やはり、この本は僕にとって特別な意味を持っているのだ。

これほどの期待感を持って映画を見ると、多くの場合がっかりすることが多い。小説と映画が異なる表現形式であると痛感するはめになる。

だが、トラン監督は僕の期待を裏切らなかった。上映中、ただただその世界に引きずり込まれた。澄んだ世界を哀しみが覆い、胸が締め付けられた。でも、そこには一縷の希望があり、どうしようもないほどのやさしさがあった。僕はそれに救われ、上映後、なんとかやりくりしながら生きていくんだという意志を持つことができた。
あの頃の思いは薄れるどころか、より一層鮮やかなものになった。

もう一度見たいな。